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「粘膜蜥蜴」飴村行

粘膜蜥蜴

いやはやすごい作品だ。

舞台は第二次世界大戦中の日本。だが一味違う。
冒頭に出てきた「爬虫人」と言う言葉に、知識のない私は「ひょっとしたら特定の人種に対する当時の蔑称か」と思ってしまったが、そうではなく、これはトカゲの頭をした人間。つまり架空の生物だ。
こんな独特の世界が展開され、あっという間に話に引き擦り込まれる。

大金持ちの子息雪麻呂の家の地下室で、雪麻呂の友人の真樹夫と大吉がおぞましい体験をする第一章。
真樹夫の兄である美樹夫の、戦地ナムールでの極限状況と、そこで出会った爬虫人の村での不思議な体験を描いた第二章。
再び舞台が日本に戻り、雪麻呂の傍若無人ぶりや許婚への思いを綴った第三章。

各章でぶっつりと別々の話が展開されるようでありながら、終盤にはその糸が綺麗に一本に繋がる美しい構成。

そして今更ながら、この作品、ホラー文庫である。
ここが肝で、おそらく描写のグロさをしてホラーと呼んでいるのだろう。そう、殺人などが起こるのだが、描写が本当にエグい。文字を読みながら顔を背けたのなんてこれが初めてかも知れない。
それくらいビジュアルに人の死や争いが醜くリアルに描かれる。
また、怖いのはそんなグロ描写だけではない。人間の汚い部分、これがまた怖い。
肉体的にも精神的にも嫌な部分をこれほどまでかと見せ付けられる。

・・・のだが、これが不思議と心地よい。
こうした、人間の見たくない部分まで潜り込む行為こそ小説の醍醐味ではないだろうか。
すっと綺麗に読める小説なんて、心には何も残らない。ごてごてしながら、心には確実に何かを残していく、これは強力な作品である。

そして、あらゆる感情が美しく結実するのはラスト2行。
優しさも恐怖も、人間のいろいろな感情を飲み込んだ芸術的な結末。
あまりの美しさに何度もページを戻って読み返してしまった。

グロ描写のため好みは分かれるかも知れないが、個人的にはとても気に入っています。

あと追記。第三章で描かれる雪麻呂と下人の富蔵との漫才のようなやり取りは秀逸。
こういう軽さもさらっと織り交ぜるから、重い作品ながらきっと気持ちよく読めるのでしょう。


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「粘膜蜥蜴」感想 飴村行

2009年「このミステリーがすごい!」6位にランキングしている本。

飴村行『粘膜蜥蜴』

応援クリックお願いします! ツイッターもやってます♪ http://twitter.com/onidokusho ホラー・スプラッター・エンターテイメント! 飴村行『粘膜蜥蜴』 国民学校初等科に通う堀川真樹夫と中沢大吉は、ある時同級生の月ノ森雪麻呂から自宅に招待された。雪麻呂

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