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「紗央里ちゃんの家」矢部嵩

紗央里ちゃんの家

第13回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。
作者が大学在学中の受賞らしい。

主人公の"僕"は、毎年夏休みに、従姉妹の紗央里ちゃんの家に遊びに行く。
今年もそうして遊びに行くのだが、どうも様子がおかしい。

まず僕を玄関に出迎えた叔母さんが、エプロンも手も血まみれ。
この時点で開始10ページに満たない衝撃急展開。
この調子でグロい描写がこれでもかと続く。うげー食事の前には決して読まないこと。気色悪い。

・・・のだが、全編に漂うのは恐怖ではなく、あくまでシュールでナンセンスな空気。ホラー的な描写を借りたコメディとでも言おうか。ホラーとコメディはきっと紙一重で、この作品はその境界線を巧く突いて不思議なおかしさを生み出している。

私はけっこう気に入った。だけれど、ネット上の評を見ると、けっこう酷評が多い。
酷評の中には割と「人物が誰も彼も異常だ」というものが見られる。確かにその通り。まともな人など出てこない。
・・・だが、これこそがポイントだと思う。
現実世界のようでいて、ちょっとずれたパラレルワールド。
ホラーが怖いのは日常の中に異常が現れるからであって、この作品はあえてその日常感を放棄したことで、怖さを逸脱してコメディ的な面白さを獲得したのだと思う。
これはかなり巧妙に仕上げられた芸術作品だと思う。すべては意図的である。

これが明らかに感じられるのが、若干ネタバレになるが、電話越しに警察が登場するシーン。
この警察が異常なことばかり言うのだが、これにより「あ、これはパラレルワールドなんだ。そうやって読んでいいんだ」と気付かされる。つまり、「これはシュール作品ですよ」という筆者からのサイン。ここで綺麗に、それまでモヤモヤとしてたものが晴れる。こうなってしまえば、後は筆者の異常世界を純粋に楽しむだけ。

ホラーの冠を被っているからといって、日常感をきちんと構築した例えば「黒い家」などとは比べてはいけない作品だし、それらと同じ魅力を求めてはいけないのだ。
(どっちが優れている、という話ではない)


紗央里ちゃんの家/矢部嵩/角川ホラー文庫
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