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「邪魅の雫」京極夏彦

邪魅の雫

毎度ながら分厚い京極夏彦妖怪シリーズ、今回は文庫版にて1300ページ超。
カバンに入れて持ち運ぶとカバンの形が変わるこのシリーズ、ある時期から分冊版も出始めたのだが、意地というのか、これが醍醐味というのか、経済的というのか、ついついこの漬物石版を買ってしまう。

シリーズ全般について書く。

殺人事件を扱うミステリである。妖怪シリーズと言うが、妖怪が出てきて人を殺すわけではない。人間による殺人である。妖怪のエピソードをモチーフにして、それをなぞるように現実の(といっても小説内だが)事件を描く。

そして謎解きがすごい。主人公(?)である中禅寺秋彦による所謂「解決編」は、200ページを越える。小さい長編ミステリなら丸ごとすっぽり入ってしまう長さである。この謎解きは「憑き物落とし」と呼ばれ、まずは事件と無関係な、それでいてテーマに沿った話が中禅寺の口から語られ、話にのめり込むうちに気付いたら事件と結びついてきて、そして綺麗に事件解決へと昇華する。鮮やかという他ない。
この圧倒的なカタルシスを味わうために1300ページを読むのだ。

シリーズを通して素晴らしい点は、ミステリの骨格となるアイデアは非常に単純である、という点。ページ数に任せてやたら謎を複雑にする、ということは決してしない。
過去の作品を振り返っても、メインの謎についてはほぼ一言で表せてしまう。そんなシンプルなアイデアが、妖怪のエピソードやら人物描写やら薀蓄やらで肉付けされ、圧倒的なボリュームの物語になる。この点が本当に素晴らしい。「推理小説は推理クイズではない」ことの見本のような本だ。(つまり、トリックだけで推理小説が成り立っているわけではないということ。)

この「邪魅の雫」もそのスタイルを踏襲している。
妖怪「邪魅」をモチーフにした、毒殺による連続殺人の物語。人間関係は複雑だが、その骨格となるアイデアは非常にシンプル。そして、鮮やかな「憑き物落とし」による解決。

人気キャラ榎木津の出番が少ないのがやや残念だが(こいつが本当に破壊的で面白いやつ・・・!)、京極作品以外では味わえないカタルシスがたっぷり味わえる。
ああ京極シリーズが読める幸せよ。


邪魅の雫/京極夏彦/講談社文庫
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