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「六月六日生まれの天使」愛川晶

六月六日生まれの天使


ふと目覚めると、私は記憶を失っていた。同じベッドには、ゴムの仮面を破った全裸の男が眠っている…。ここはどこ?この男は誰?扉を開けると、意外にも外は雪。そして初老のサンタクロースが、私に手招きをしている!記憶喪失の女と謎の男の奇妙な同居生活、その果ての衝撃!傑作ミステリー長篇。
(Amazonより)

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この作家の作品は初めて読んだ。
記憶喪失となった主人公が過去の記憶を探る、その謎を解き明かすこと自体が主眼のミステリなのだが、同居する男性の設定含めトリックが重層的に仕掛けられていて楽しめる。

個人的にトリック以上に印象に残ったのは、作品タイトルの由来。
この「六月六日生まれの天使」の意味は作品中で明らかになるのだが、この一点だけを理由に作品全体を「ラブストーリー」と読んでも差し支えないくらいのもの。

文庫の帯には「恋愛ミステリ」と書かれているが、先述のシーンに冠したものかは知らない。

読まれる際は、恐らくはとても男性目線と思われるラブシーンが何度か登場するのでその点ご注意を。
帯の意味が、これらシーンを以て「恋愛」なのだとしたらなんだかなあ、という感じだ。(ただし「ポルノミステリ」というほどではない)

六月六日生まれの天使/愛川晶/文春文庫
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「氷菓」米澤穂信

氷菓

ひょうんなことから「古典部」に入部することになった高校生のホータローが、日常の様々な小さな謎を解いていく青春ミステリ。

メインの謎は、三十三年前の学校で起きた事件。
過去の文集や壁新聞など、わずかな手がかりを元に謎を解き明かしていく過程が心地よい。

本編とは違うところで、素敵な言葉があったので抜粋。

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あんたひとりでもめげちゃダメ!男の子は孤独に耐えて強くなるものだから。
もし誰か他にいるなら、それはよかったわ。男の子は人間の中で磨かれるものだから。
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ユーモア交じりに照れ臭くはぐらかすような中で、本質を言い当てているようなところがとても素敵。
それから、これ。

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きっと十年後、この毎日のことを惜しまない。
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うーん、逆説的に、ものすごく怖い言葉だ。
胸を張ってこんなことが言える毎日を送っているか、というか、言えるような毎日を送れるようにしないとね、という。
なかなか痛くて気持ちよいです。

氷菓/米澤穂信/角川文庫
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「ルームメイト」今邑彩

ルームメイト

大学生になった春海は、引越し先の東京での部屋探しで出会った麗子と、ルームメイトとしての生活を始める。
しばらく共同生活を続けていたが、ある日麗子は失踪。
時を同じくして、単身赴任中の会社員松下の内縁の妻、由紀が失踪。
失踪者を探す二人が出会い、お互いが探している麗子と由紀は同一人物ではないかと推測するのだが、その彼女はやがて死体で発見され・・・。

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キャリアのある著者のようだが、なんだかんだで初めて手に取った。楽しめました。

怪しい伏線がたっぷりあって、ははあ、さてはこういうオチだな、と考えつつも「裏切ってくれ、裏切ってくれ・・・」とページをめくっていくと、・・・いやー、爽快!見事にビックリさせてくれた。騙されました。

ギリギリの伏線も、さりげないミスリードも、精緻に出来ていて素晴らしいし、ホラー的なアクセントも効いている。

唯一の難点は、本筋とは関係ないけど、途中で出てくる「パソコン通信」かな・・・。
あとがきで著者も「10年前に書いたものなので」と弁解しているが、上梓は2006年。もう21世紀だよ!
欲を言えばここだけちょびっと手を入れてほしかったのだ。他は大満足。


ルームメイト/今邑彩/中公文庫
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「ボトルネック」米澤穂信

ボトルネック

ふとしたことで迷い込んだパラレルワールド。
僕の住む世界とそっくりのもう一つの世界では、生まれなかったはずの姉がいて、生まれたはずの僕がいない。
僕の代わりに姉が生きていることによって、二つの世界に少しずつ違いがあることに気付いていく・・・。

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というお話。

ある意味でとても残酷だ。
誰もが、自分以外の誰かと自分を比べてしまう。それで落ち込んだりすることもあるけれど、最後は開き直ることができる。だって、違うタイミングで生まれた違う人間なんだから。
でも、この話の場合は違う。まさに自分の代わりに生まれた、もう一つの存在。否が応でも比べてしまう。そして自分のダメさを知ったときの絶望感と言ったら・・・。

パラレルワールドというSFな飛び道具を使って、まさかこんな痛い所にズブズブ踏み入る小説を書くとは。恐れ入った。
軽いタッチでユーモアを交えながらの読みやすい語り口なのだが、それでいてこの容赦なさ。素晴らしいね。

どうやら売れっ子作家らしい著者の作品は初めて読んだ。
ひょっとしたら著者の中でも「読み手を選ぶ作品」なのではないか、と邪推したが、いずれにせよ次が読みたくなったのは確か。また素敵な作家に出会ってしまった。


ボトルネック/米澤穂信/新潮文庫
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「シャドウ」道尾秀介

シャドウ

もう間違いない。
向日葵の咲かない夏
骸の爪
片目の猿
背の眼(上)(下)
に続く、道尾秀介連続読破5作目。移り気なもんで、一人の作家を文字通り立て続けにここまで読むのはかなり珍しいかも。それだけ惚れ込んでいる。

ひとまず、あらすじを毎度のAmazonから。

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人は、死んだらどうなるの?―いなくなって、それだけなの―。その会話から三年後、凰介の母は病死した。父と二人だけの生活が始まって数日後、幼馴染みの母親が自殺したのを皮切りに、次々と不幸が…。父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは?いま最も注目される俊英が放つ、巧緻に描かれた傑作。本格ミステリ大賞受賞作。
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随所に散りばめられた謎と、解けそうでもつれる糸。違和感を感じながらも読み進めると、それらは実に綺麗に解決される。筆者はミステリ的な読まれ方をあまり好まないようだが、あえて言えば「限りなくフェアだ」と感じた。違和感たちも、最後には無理なく整理される。まあ信用しなさい、てなもんだ。

・・・とか考えながら読み終えると、あとがきによるとどうやら、「向日葵の咲かない夏」がアンフェアとの批判を受けたため、その回答としてフェアに徹したのが本作とのこと。なるほど。でも、私は向日葵もフェアだと思うけどね。

そして、至るところに用意された伏線とシンクロニシティが素晴らしい。全ての要素が有機的に呼応しあっていて、細部に至るまで充実している。小ネタだと思われたものが別の箇所と綺麗にシンクロしたりしてるし・・・。ものすごい密度だ。
このサービス精神。この構成力。

という緻密でサービス精神旺盛なミステリ作品なのだが、最後に、これを書いておきたい。
泣きました。電車の中で、ボロボロと。
つまりは、ミステリ的でありながらも、そんな作品なのです。超推薦。


シャドウ/道尾秀介/創元推理文庫
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